投稿日:2009年10月26日

カテゴリ: コラム
担当:web店長

カードゲームのコミュニティは拡大しなければ先はなし!

こんにちは!
カード・ブランチweb店、店長のルコです。

私が日頃メーカーさんや他店舗の方とよくするお話をユーザーの皆様にもちょっとお話してみようかと思います。
※ユーザー向けではない話をユーザー向けに直していますので、わかりにくいかもしれません。予めご了承下さい。

■カードゲームの人気
カードゲームは(もちろんここで私が指すのはトレーディングカードゲーム)、コミニィケーションのゲームだというのは多くの方がご存知だと思います。理由は対人戦であるから、と当たり前の話なんですが。

カードゲームは様々な種類のものが発売されているのをご存知でしょうか。軽く20タイトル以上のカードゲームが国内で販売されています。

流石にそんなにタイトルが出ていると、人気のもの不人気のものの差が出てきます。この人気のバロメーターには2種類あって、1つは「全国的に販売数量が多いもの」、2つ目は「あなたの周りでユーザー人口が多いもの」です。前者はメーカーや販売店的な人気、後者は目に見える人気です。前者は細かく分類すると2通りに分岐するのですが、それは少しややこしい話になるので割愛します。

■カードゲームの優良性の判断
カードゲームは、メーカーのプロモーション、販売戦略、ゲーム性などを軸に考え良し悪しを判断することがあると思います。
しかし私が考える「優良」なゲームは、ユーザー人口が「正常なピラミッド型」のゲームが「優良」のゲームと判断します。もちろんそれはメーカーの行動の1つ1つが正常なピラミッドを構築しているので、メーカーの行動自体が評価できることに繋がります。
ちなみに正常なピラミッドとは底辺のカジュアルユーザーがもっとも人口割合が多く、上部にはコアユーザー、プロプレイヤーなどがきちんと存在するピラミッド型です。

■カードゲームの栄華と衰退
ユーザー人口の「正常なピラミッド型」は、ほっておくと、勝手に逆ピラミッド型に変形していきます。コアなユーザーが増え、新規ユーザーが減っていくことで「逆ピラミッド型」は完成します。現在で言えばリセやガンダムウォー、ディメンション・ゼロなどのカードゲームが典型的な「逆ピラミッド型」のカードゲームです。新規層が開拓されず、ファンやコレクターの力でのみ支えられるカードゲームです。
では逆ピラミッド型は「粗悪」なカードゲームなのでしょうか。
それは考え方によります。逆ピラミッドの一番広い上部に多くのユーザーが存在するということは、十分な規模のユーザー人口を維持していると言えます。ある一定数のユーザー人口が維持できれば、その人数の内によってそのカードゲームの環境は完結します。
それだけでカードゲームの販売というのは継続可能なんです。
逆の考え方をすれば、上部が崩れればそれまでのカードゲームということになります。
つまり「逆ピラミッド型」は衰退の前兆もしくはその危険性が常に混在する環境にあるということです。メーカーはこれを阻止し、「正常なピラミッド型を維持する」「正常なピラミッド型に戻す」「逆ピラミッド型を崩さない」などの策を取らなければなりません。でなければ衰退は必至です。(蛇足:だからカード・ブランチはピラミッドの底辺のカジュアルユーザーを拡大することを目的に作られました。)

■ユーザーは目に見える人気しか生み出せない。
ユーザーの中には正常なピラミッド型を作り出す努力をする方がいます。これは私たち販売店にとってもメーカーにとっても非常にありがたい存在であり、応援・支援したいと思うユーザーでもあります。しかし1ユーザーにできることは前述した「目に見える人気」を生み出すことが限界であり、全国的なムーブメントを1ユーザーが起こすことは非常に困難です。地域差というのが出るのは、そのエリアのオピニオンリーダーの特性に依存するからです。

■メーカーは「逆ピラミッド」の直し方を知らない。
さてユーザーに限界があるならやはりメーカーが頑張らなければならないのですが、販売店側からみてもメーカーの苦悩や挑戦はよくわかります。しかし国内のメーカーのほとんどは、他のメーカーの挑戦や失敗を見ていないので、同じ失敗を繰り返します。販売店側からみると言葉は悪いですが「アホか」と思うこともあるわけです。逆にこれは非常に良い策だ!と関心することも多々あるのですが、他のメーカーはそれを知らない。もちろん企業で有効なノウハウは内密にしておくのが必然ですが、失敗くらいは反面教師にしてほしいところです。販売店には見えていてメーカーに見えていないことは多いのです。でもせめて他社製品との比較研究くらしはしてほしいところなんですが。(そういう意味ではタカラトミーさんは本当に頑張っているな、と評価できることが多いです。)

■ポケモンカードゲームとマジック:ザ・ギャザリングの強引な直し方。
ピンと来た方もいると思います。この2つのタイトルは強制的に逆ピラミッドを破壊します。それは所謂「版落ち」です。昔のカードセットをまとめて使えなくすることで、新規と上級者のカード資産を一時的に平等にすることによって、再スタートを切る方法です。これは逆ピラミッドを打ち壊す有効な策ではありますが、そのリスクは、そのカードゲームが立ち上げた時期と同じノウハウを持ってユーザーを確保しなければならない、ということです。カードゲームをたくさん世に送り出しているブシロード社長木谷高明氏も、「立ち上げに失敗したカードゲームは成功しない」と言っている通り、カードゲームは立ち上げ時期に一定数のユーザーを確保できないと、いきなり極少の逆ピラミッド型が完成してしまい、いきなり窮地に立たされるのです。「版落ち」というのは、今までのユーザーを引退させるきっかけになるリスクとともに新規ユーザーを獲得するという強引な「ピラミッド返し」なのです。正直それができるタイトルはよほどの経験と自信(ポケモンなどとくに)がなければ使えないワザです。なぜなら中途半端なタイトルが再スタートを切るというのは、また失敗できない立ち上げ時のリスクと同等のリスクを負うからです。

■ヴァイスシュヴァルツは正常なピラミッド型を維持する半永久機関を持っている。
ヴァイスシュヴァルツというカードゲームが、新しい風を起こしています。これは私の考え方を裏付けるものになりました。ヴァイスシュヴァルツは「タイトル別」に販売され、その全てを「集める必要がない」を前提にリリースされています。自分の好きなタイトルだけ買っていれば遊べるカードゲームです。そしてしばらく興味のないタイトルが続けば離れればいいし、また再び食指の動くタイトルが出たら復帰すればいいのです。人気コンテンツが参戦するたびに新規層・復帰層が確保でき、それには版落ちも必要ない、必要な条件は人気コンテンツの参戦を絶やさないこと、です。そのおかげでヴァイスシュヴァルツは新規参加者が絶えません。また現状昔のカードプールでも、自分がその作品が好きなら問題なく戦える「ネオスタンダード(作品単デッキのみ使用できるフォーマット)」を多くのイベントで採用しており「カジュアルに遊べるカードゲーム」という「正常ピラミッド型」を維持する目的で立ち上げられ、その実叶ってかたった1年で急速に成長しました。正直、これも正常なピラミッド型を保つ強引な手法で、なかなかマネできないものだと思います。

■初心者に優しくないゲームは専門店もお勧めできない。
セールスポイントのない商品を売るのは難しい、ただそれだけの話です。スターターという名のパーツ取り(コアユーザーが、そのセットに入っている一部優秀なカードのみを目的に買う)な商品は、もはや「スターター」ではないのです。しかし、「逆ピラミッド型」のゲームは、一番広い層に買ってもらえないと困るので、建前だけスターターなパーツ取りの箱をリリースする傾向があります。もちろん優秀なパーツ取り、であればそれはそれで勧められるポイントではあるのですが・・・。
最近は構築済みデッキだからとルールブックが入っていないゲームがあったりします。メーカーに聞いたところによると「既にやっている人向けだから」ということらしいのですが、そもそもそのゲーム、だいぶスターターが出てないんですが。その回答が「オフィシャルページにルールが・・・」・・・何を言っているのでしょうか。ただでさえルールを覚えるのが難所なカードゲームなのにわざわざインターネットでルールを調べろとは酷すぎる、そんなこともありました。
商品の特性上、初心者にとても優しい仕様のレンジャーズストライクも伸び悩んでいるので、ただ初心者に優しければいいというわけでもなさそうなのですが、それでも全てのカードゲームは初心者に優しいべきです。ポケモンカードゲームやマジック:ザ・ギャザリングは無料のルール冊子を定期的に配布しています。必ず箱で買うとルールシート・プレイシートが入っているカードゲームもあります。色々なカードゲーム商材を見てきたからこそ、勧めるに足るゲームかどうかはすぐにわかります。また将来「逆ピラミッド」になるかどうかもすぐにわかります。ただ良し悪しを専門店は選べないジレンマもあります。

■地域的な「正常なピラミッド」は作れる。
メーカーのフットワークに限界を感じるなら、専門店もユーザーも動くことが出来ます。
本来そんなことする必要もないのだけれど、カードゲームが好きなら動きたい!って思いにかられるのは決して悪いことじゃないのです。そういうユーザーの熱意がメーカーを変えた・動かした例もあります。
では地域的に自分の好きなカードゲームタイトルを「正常なピラミッド型」に変える、保つにはどうしたらいいのでしょうか。
それには今自分の好きなカードゲームを初心者が始めるにはどのような障害があるかを考える必要があります。(その障害がメーカー的なものの場合、メーカーを動かすに足る活動を起こさねばなりません)
1つだけ言えることは「地域的な正常なピラミッド」はきちんと作れるということです。
1ヶ月で1人、半年で2人でも新しい顔ぶれが増えたなら、それはまだポテンシャルの高いカードゲームといえます。

■メーカーは商品名をもっと見せるべき!
広告費が・・・、プロモーション費用が・・・、などメーカーにも様々な事情がありますが、それでも絶やしてはならないのは「商品名」を忘れさせないことです。いまだ売っているにも関わらず、たまに名前を聞くと「あ、それまだあったんだ」と言われるカードゲームは名前の露出が足りないのです。ユーザー数が少なくても、名前だけ色々なところで目にすれば「流行っているという錯覚」を起こすことができ、はじめるきっかけを後押しすることができます。正直公式ページだけの更新は露出に含まれません。そもそも知っている人しか見ないのですから。
専門店もその名前の露出に協力することができます。
名前を常に出し続けることで衰退速度を格段に下げることができ、逆転の一手の有効性をあげることができます。カードゲームにはイメージ戦略というのが大事ということが今ひとつ理解されていないように思えます。


さて、長くなりましたがこういった内容は普段、同業他店さんやメーカーの担当の方々とお話する内容の一部なので、カードゲームユーザーの方にはわかりにくい内容だったかもしれません。が、カードゲーム界隈は優秀な人材を欲しています。カードゲーム界隈に興味のある方はぜひ動いてほしいなと。ちょっと書いていたらタイトルと若干ズレた気がするので、またこの手の話でユーザーサイドの話でも書ければと思います。

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